『李毛異同(14)』 ‐李儒の病欠

(董卓)即ち(長安)城外に至り、百官俱に出でて迎接す。只だ李儒は病を抱く有りて家に在り、出でて迎うるあたわず。(「毛本」第九回)

 
 董卓暗殺の直前、帝位を餌におびき寄せられた董卓長安に到着した場面ですが、この一段落は「毛宗崗本」によって新たに挿入されていました。
 「李卓吾本」以前ではクーデター時に李儒が登場することはありませんでしたが、毛宗崗によってその様子と理由が描かれました。読者としても、こんな大事な場面にあの李儒はどうしたんだと疑問に思ったのでしょうから、毛宗崗はその辺も丁寧に補ったと言えます。クーデターにあたって董卓の頭脳をきっちり抑えていたんだ、という王允サイドの周到さを示す一幕ですね。
 同様の挿話は李傕ら四将軍に対しても行われおり、この場面の前に彼らが郿塢に留め置かれたことが描かれています。これも、「毛宗崗本」で新たに挿入された文章です。
 ブレーンたる李儒を奪われ、手足である四将軍は郿に留まったまま、そして肝心の名将呂布・李肅は既に敵方に寝返っていたのですから、まったくもって董卓は丸裸だったわけですね。