『李毛異同(26)』 -嚴輿と孫策

厳輿が至ると、孫策帳に招いて共に酒を飲んだ。その最中、孫策は剣を抜き払うと厳輿の座を斬って、厳輿は驚き転倒した。孫策は笑って「ちょっと戯れただけだ、驚くことなかれ。」と言い、厳輿に問い曰く「汝の兄はいかなる考えであろうか?」厳輿曰く「將軍と共に江東を平定せんと欲す。」策大いに怒り「鼠輩が吾と同等となろうと言うか!」厳輿が急に立ちあがったので、孫策は剣を飛ばしてこれを斬った。(「李本」第十五回)

 孫策が厳輿と会見してこれを斬る場面ですけど、「李卓吾本」では何故か孫策が唐突に厳輿をからかっており、何か孫策が感じ悪いです(笑)
 『吉川三国志』も同様に描いていまして、何か不思議に感じたのですが。

 このシーンの元ネタは孫策伝引く『呉録』ですね。 

孫策白刃を引き席を斫り、厳輿の體動す。策笑い曰く「卿はよく坐して躍り,勦捷なること常ならざると聞き、聊か戲れるのみ」輿曰く「我刃を見れば乃ち然り」策其の無能知るなり、乃ち手戟を以て之を投じ、立死す。

 「李卓吾本」はこの前半部分だけを挿入したので何とも中途半端になってしまった訳です。
 「毛宗崗本」はこれの太字部分を削りました。